アートのコツライブラリー

2012年12月16日日曜日

イベント企画のコツ

「アートのコツ」はアートホリックな方々にアートを 楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は、緑の光線を主宰する森下典子さんに「イベント企画のコツ」を教えてただきました。

『なんとかと なんとかがいた なんとかズ』 安田謙一 著 プレスポップ 
 2011年まで名古屋のレコード店で働いていたのですが、その頃に店で入れていた湯浅湾のCDをリリースしているレーベル、boidが音楽評論家の湯浅学さんのレコードコンサートを開催することになり、イベント開催の手伝いをしたり、レコード店の同僚がイベントの企画を始めて、その手伝いもしているうち に、自分でイベントの企画をしてみたいと思い始めました。

 その頃よく聴いていたのが韓国のロック・バンド、チャン・ギハと顔たちで、そのアルバムの解説を書かれていたのが、ロック漫筆家の安田謙一さんでした。チャン・ギハたちの音楽への理解の深さと、チャン・ギハたちに負けないくらいの小気味いいテンポの安田さんの文章がとても印象に残りました。安田さんのおしゃべりを名古屋でも聞けたらいいなと思いました。

 しばらくして、安田さんの書籍が2012年の後 半に発売されることを知り、書籍の発売記念イベントを企画したい旨を、書籍の出版元に連絡をしたことがきっかけで、名古屋でのイベントが実現できる運びとなりました。安田さんの今回の書籍の発売記念ツアーは2013年1月に大阪、2月に東京、3月に名古屋で開催されます。安田さん単独のイベントは今回が初となります。安田さんを観に来てくださる方たちと同じような心持ちで、ワクワクしながらイベント当日を迎えられればと思っています。

 それから、昔からよく聴いていたバンド、ロンサムストリングスとSakanaの、それぞれのギタリストの桜井芳樹さん、西脇一弘さんのデュオのライブを、2013年の前半に名古屋で開催する企画も準備中です。西脇さんがイラストレーターとしても活躍されていて、Sakanaのアルバムのジャケットも描かれているので、西脇さんの作品の展示とライブの同時開催を検討しています。Sakanaを聴いたことがない方にも、西脇さんの作品を観ていただき、Sakanaの音楽にも興味を持っていただけるとうれしいです。 

森下典子
緑の光線主宰。2011年まで名古屋のレコード店に勤務後、2012年より音楽イベント企画を開始。

■「なんとかズ・オン・ツアー 安田謙一がやって来る 2013」
「ロック漫筆家によるロック漫談&ディスク・ジョッキー」(レコード鑑賞とおしゃべり)お相手:安田謙一
日時/2013年3月19日(火)19:00(開場18:00)
会場/オーガニックカフェ・ギャラリー 空色曲玉
入場料/予約1500円、当日1800円(ともに1ドリンク代500円別途必要)
企画・制作/緑の光線
協力/プレスポップ
http://www.presspop.com/jp/nnn_sign_tour/

予約・お問い合わせ/緑の光線
 

2012年9月15日土曜日

ワークショップのコツ



「アートのコツ」はアートホリックな方々にアートを 楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は、作家の富永敏博さんに「ワークショップのコツ」を教えていただきました。

今回は、ワークショップのコツについてのお話の依頼ですが、私は参加型の作品をおこなっていますので、そちらを中心にお話をさせて頂きます。参加型の作品をおこなうきっかけは、大学院の修了制作のプロジェクトです。現在は、平面、立体、インスタレーション、プロジェクトなどさまざまな表現で発表をおこなっています。

大学院の修了制作の『Happy Plants』は、学内にいる学生、職員の方に、チューリップの球根をわたして、学内のお気にいりの場所に植えてもらう作品です。秋に植えたチューリップは、春になると至る所に咲きはじめます。だれかが植えないと勝手に咲くことはないので、咲いた時はふと立ち止まり「あれっ?」と不思議な気持ちにさせてくれます。その後、2006年までおこないました。その間、さまざまな方たちに植えてもらいましたが、美術に関わっていない方へのアプローチの仕方が難しく悪戦苦闘しました。

参加者といっしょに取り組んだ作品を紹介します。越後妻有アートトリエンナーレ2009に出展した『かき氷マウンテン』は、地元の方といっしょに雪で作品を制作しました。その時は、人よりも大きな雪山を制作したので、地元の方のご協力が得られなければ制作することができませんでした。そして、昨年から取り組んでいる『My House Flag』は、旧保育園や商店街の空店舗で、参加者に自分の家の旗を古着や布を使用して制作する作品です。(注:2011年は画用紙に描く方法で制作)

参加型の作品は、参加者の理解や協力が得られなければ作品を制作できません。いろいろな方と出会い制作することで、最初の計画とは違った形に変化する時もあります。参加者とはその日だけの出会いのときもあります。参加者といろいろ話をしたり話さなかったりと、コミュニケーションは人それぞれです。はじめは緊張した様子の方も、制作していると次第に打ち解けて帰りには、「楽しかった」「もう一度参加してみたい」と帰っていく方もみえます。参加してもらうことで、少しでも気持ちが変化する場を、今後も提供していきたいと思います。

富永敏博
1978 愛知県生まれ。2004年愛知県立芸術大学大学院修了。名古屋を拠点に活動中。作品は絵画、立体、参加型など多岐にわたる。

展覧会スケジュール
「常滑フィールド・トリップ2012
ワークショップ「My House Flag -お家の旗を作ろう-」をおこないます。
会期:2012106日(土)~14日(日)
会場:常滑市やきものの散歩道周辺
ワークショップ「My House Flag -お家の旗を作ろう-」は会期中の土・日曜日13:0017:00に旧常滑北保育園で開催

「秋の小旅行2012
「ギフトプロジェクト」に参加します。今回は事前に瀬戸の陶芸,ガラス工房に訪れ、スタンプラリー用の景品(皿、湯呑み、オブジェなど)を出品者、協力者に制作していただきました。
会期:2012104日(木)~14日(日)月・火・水曜日は休み
時間:11:0017:00(店舗により異なる場合あり)
会場:尾張瀬戸駅前周辺の商店街

富永敏博 展「ワンダートリップ」
会期:20121020日(土)~1111日(日)会期中の金・土・日曜日のみ開廊
時間:13:0019:00
会場:CROSSING(名古屋市千種区山門町1-11 覚王山コーポレーション105

2012年6月15日金曜日

アートが生まれる場をつくるコツ

「アートのコツ」はアートホリックな方々にアートを楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は、アーティストユニットN-markの武藤勇さんと野田利也さんに「アートが生まれる場所をつくるコツ」について教えていただきました。

八嶋有司個展"formless works"
撮影/mutoisamu
 アートホリックの田中さんにタイトルの文章を書いてと依頼されたが、コツ等なく信念か怨念のようなものがそうさせたと言うのが正直なところかもしれない。いつも「そんなモノやコトが必要だ!」と思っていたらやっていた。でもするのは大変。の繰り返しということにつきる。

 1998年、名古屋に住む僕らが感じていたのは、「僕らがリアリティを感じるアートシーン」 というものが存在しないということでした。ですから、「それ」を自分たちでつくるしかありませんでした。それが「僕らが見たいアートに出会う」という一つ のコンセプトによって「僕らの場所をつくること」でした。

 当時経験もスキルもコネクションを持たない結成当時の僕らにとっては、「場所」を持つことがそのコンセプトを実現させるための唯一思いつ いた方法でした。そこでは展覧会や、アーティストトーク、思いつきのイベントを重ねながら、若いアーティストたちと、丁寧にアートに対話をしながら作り上げていくスタイルで、自分たちなりにアートシーンというものを構築し、その実感を得るにいたりました。

 そして私達の機転となったのは具体的な場所が無くなってからでした。場所を失ってもできることは?場とは何か?できるのかできないのか?を考えながら 、できることからやってみました。最初は僕らのミーティングをカフェやギャラリーなどさまざまな場所に移しながら、オープンミーティングを開催し、さまざまな人やアーティ ストに出会いました。その活動が展開し、全国を横断したミーティングキャラバンや、カフェライン等の全国のネットワークに展開することにも繋がりました。 その後はさまざまな町や場所、プロジェクトに参加することにつながり、多くの経験やネットワークを生み出しました。それらがさまざまなアートプロジェクトに展開していきました。

 今回のN-MARK B1も、あいちトリエンナーレの会場となり、それを機にオープンしたアートラボあいちの運営にN-markの武藤が個人的に関わる中で築いた人脈や信頼関係で実現しました。N-markが少しずつ培ってきたネットワークや人脈がこの新しいアートの拠点、長者町トランジットビルに集まりました。

 アートだけではなくクリエイターや、カフェ、古書店、建築事務所などが入居するビルの誕生と共に新しいN-markの場所がオープンしました。ここはN-markが主催するときには「N-MARK B1」として、その他の場合には「トランジットギャラリー」として運営する、シェアギャラリーです。N-markと しては、これまで通りブレなく「僕らが見たいアート」を展開していきます。同時にこのビルの入居者や、近隣であるアートラボあいち、エビスアートラボ、ス タンディングパインや、来年開催されるあいちトリエンナーレなどとリンクしながら現在の名古屋のアートシーンをより盛り上げていけたらと考えています。
 
N-mark
1998 年より名古屋を中心にアートシーンを盛り上げるための活動として、野田利也、武藤勇の2 人を中心に、現代美術の展覧会やイベント、アートスペースの企画・運営、野外展、全国のオルタナティブスペースを横断するミーティングキャラバンなど、さまざまなアートプロジェクトやサポート事業を展開。今後はさまざまなアーティストやクリエイターが入居する「長者町トランジットビル」のソフトランディングや、同ビルにオープンしたギャラリー運営などを拠点に、さまざまな人やチームを巻き込みながらアートプロジェクトを展開していく。
 
ユニークなアーティストのプレゼンテーションを随時受け付け中。
 
隔週でジャンル横断的なゲストをお迎えしてのインタビュープログラム「FRIDAY NIGHT TALK SHOW 世界の塔の下から」をUSTREAMにて配信中。
 

2012年3月20日火曜日

トリエンナーレをつなぐコツ

「アートのコツ」はアートホリックな方々にアートを 楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は、「アートラボあいち」スタッフの近藤令子さんに「トリエンナーレをつなぐコツ」を 教えていただきました。

  2011821日、長者町に「アートラボあいち」が開館しました。アートラボあいちとは、あいちトリエンナーレ2010でまちなか展開の中心となった長者町でまちなかの展示スペースであったビルを利用して新たに活動を始めたアートスペースです。地下1階から4階までのスペースがあり、あいちトリエンナーレの情報を発信するスペースや、県内外の芸術系大学を始めとした若手アーティストの紹介をする展示スペースがあります。
 その中で、NPO提案型協働事業として、2階と地下1階を主に運営しているのが「はち」という団体です。私は、そのはちに所属し、オープンから約半年仕事をしてきました。はちでは、様々な団体にスペースを貸し出す他、自主企画の展覧会や催物を実施してきています。
 様々な企画の運営を通して、この地域で活動しているアーティストやまちの方々、アートの活動団体等に巡り合うことができたと感じています。それは、やはりあいちトリエンナーレという巨大なアートのイベントが2010年に開催され、その影響がいろんなところで根付いているからではないでしょうか。例えば、アートラボあいちに来るまちの方たちとお話していると、必ずと言っていいほど、あいちトリエンナーレの話題が持ち上がり、その時の思い出や次回への期待を感じることができます。また、それはまちの人だけでなくあいちトリエンナーレをきっかけにアートに興味や関心を持つこととなった人たちにも言えることだと感じています。この長者町というまちの中に、アートセンターとして、アートラボあいちが存在しているからこそ見えてきたことであり、そこで活動してきたことでより強く感じることができました。
 また、様々な方々と交流を続けていく中で新たに発見できたこともあります。出品作家によるアーティストトークを通して作品や作家がより身近な存在となったり、ネットワークミーティングというあるテーマに沿って集められた人々との意見交換によってそれまでは気が付かなかったジャンルの楽しみ方をみつけることができたり、アーティストサポートプログラムに参加した作家との交流を通して今現在活動しているアーティストの状況を共有することができました。さらに、ポートフォリオミーティングでは、アーティストによる自身の作品や制作についてのプレゼンテーションを聞くことでこの地域で活動しているアーティストの情報を得ることができたり、アートラボあいちに来館する方々と話をすることで面白い展覧会の情報を交換できたりといった貴重な体験をすることができました。これは、アートラボあいちが、単に展覧会だけをみせるためだけの施設ではないことが大きなポイントだと感じています。
 アートラボあいちで得ることができたこのような経験は、私個人で完結することなく、今後も様々な活動を通して、色んな角度からアートを繋ぎ、広げていくハブのような存在となっていくことができればと思っています。アートラボあいちのような空間で、アートの取り組みを間近で感じたり、情報交換したりしていくことで、思いがけない所で人と人が、アートと人が協働していき、その流れの中で次回のあいちトリエンナーレ2013にもつながっていくのではないかと思います。


近藤令子
美術館やあいちトリエンナーレ2010勤務後、アートラボあいちにてはちスタッフとして活動中。
アートラボあいちhttp://www.artlabaichi.com/